コラム

遺族基礎年金を受ける条件とは?

2025.05.23

大切なご家族を亡くされたとき、生活の支えとなる制度のひとつに遺族基礎年金があります。
遺族基礎年金は、一定の条件や遺族対象者の範囲が決まっています。
今回は、遺族基礎年金の受給条件や遺族の範囲などについて、そのポイントを解説します。

 

1. 遺族基礎年金とは

遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた人や老齢基礎年金の受給資格があった人が亡くなった場合に、その遺族に支給される年金です。
自営業者(第1号被保険者)、サラリーマン(第2号被保険者)、その配偶者(第3号被保険者)の死亡時に支給される可能性があります。
また、遺族基礎年金を受けるには一定の条件があり、対象となる遺族の範囲もはっきり決められています。
遺族基礎年金や遺族厚生年金は、残されたご家族の生活の安定を図ることを目的としています。
 
遺族基礎年金の支給額については↓の記事をご参照ください。
 
遺族厚生年金については↓の記事をご参照ください。

 

2.遺族基礎年金の受給条件

2-1.受給対象となるケース

遺族基礎年金は、次のいずれかのケースに該当した場合に、子どもがいる配偶者または子ども自身に支給されます。
 
(1) 国民年金の被保険者が死亡したとき
 
(2) 国民年金の被保険者だった人が、日本国内に住所があり、60歳以上65歳未満で死亡したとき
 
(3) 老齢基礎年金を受けている人(保険料納付済期間と免除期間を合わせて25年以上に限る)が死亡したとき
 
(4) 保険料納付済期間と免除期間を合わせて25年以上ある人が死亡したとき

 

2-2.保険料納付の条件

2-1.(1)の被保険者の死亡、または2-1.(2)の60歳以上65歳未満死亡に該当する場合、次の納付要件があります。
 
・ 死亡日の前日時点で、死亡月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間が3分の2以上あること。(保険料滞納期間が3分の1未満であること。)
 
※ ただし、令和8年4月1日以前の死亡については、上記の条件を満たさなくても、死亡日の直近 1年間に保険料の滞納がなければよいとされています。
 
したがって、一定期間しっかりと保険料を納めていることが遺族基礎年金支給の重要なポイントになります。
 
また、厚生年金保険の被保険者期間(昭和36年4月1日以降)は、 国民年金の保険料納付済期間 とみなされます。これは基礎年金制度の創設によって、厚生年金加入者は同時に国民年金の被保険者でもあるためです。
 
 

3.遺族基礎年金を受給できる遺族の範囲

遺族基礎年金を受けることができる遺族の範囲は、死亡した人によって「生計を維持」されていた次の人です。
 
(1) 子どものいる配偶者:18歳未満(18歳になる年度の3月31日まで)または20歳未満で1級または2級の障害の状態にある子どものいる配偶者
 
(2) 子ども:18歳未満(18歳になる年度の3月31日まで)または20歳未満で1級または2級の障害の状態にある子ども
 
ただし、上記(2)の子どもに対する遺族基礎年金は、(1)の配偶者が遺族基礎年金を受けている間、または生計を同じくする父もしくは母がいる間は、支給が停止されます。
したがって、子どもが遺族基礎年金を受給するのは、両親ともに亡くなられた場合などに限られることになります。
 
このように、遺族基礎年金を受給できる遺族の範囲は、はっきりと決められています。
 

4.「生計を維持」されていたとは?

死亡の当時、下記の2つの要件に該当した場合に、「生計を維持」されていたと認定されます。
 

4-1.生計を同一にしていること

(1) 配偶者または子どもの場合
 ① 住民票上、同じ世帯に属しているとき
 ② 住民票上、世帯は別にしているが、住民票上は同じ住所であるとき
 ③ 住民票上、住所は異なっているが、次のいずれかに該当するとき
  a. 日常生活を共にし、かつ、消費生活上の家計を1つにしていると認められるとき
  b. 単身赴任、就学または病気療養等のやむを得ない事情があって、
    (a)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
    (b)定期的に音信、訪問が行われていること
が認められ、そのやむを得ない事情が消滅したときは、日常生活を共にし、かつ、消費生活上の家計を1つにすると認められるとき
 
(2) 父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等内の親族の場合
 ① 住民票上、同じ世帯に属しているとき
 ② 住民票上、世帯は別にしているが、住民票上は同じ住所であるとき
 ③ 住民票上、住所は異なっているが、次のいずれかに該当するとき
  a. 日常生活を共にし、かつ、消費生活上の家計を1つにしていると認められるとき
  b. 生活費、療養費等の生活の基盤となるような経済的な援助が行われていると認められたとき
 
 
 

4-2.収入要件を満たしていること

次のいずれかに該当する場合に、収入要件を満たします。
 
(1) 前年の収入が年額850万円未満であること(前年の収入が確定していない場合は、前々年で判断)
 
(2) 前年の所得が年額655.5万円未満であること(前年の収入が確定していない場合は、前々年で判断)
 
(3) 一時的な所得があるときは、これを除いた後、(1)または(2)に該当すること
 
(4) 上記(1)から(3)に該当しないものの、定年退職等の事情により、近い将来(概ね5年以内)に、(1)または(2)に該当すると認められること
 
※ 収入の確認資料として、以下のものが挙げられます。
・前年または前々年の源泉徴収票
・課税証明書
・確定申告書など収入額および所得額を確認することができる書類
・(3)(4)の場合、当該事情を証する書類等
 
※ 内縁の妻(夫)であっても、事実上婚姻関係と同様の事情(健康保険の被扶養者であるなど)にあり、生計を維持されていれば、遺族基礎年金を受給できます。
 

5.まとめ

遺族基礎年金は、大切なご家族の生活を守るための重要な制度です。
その受給には、国民年金保険料の納付状況や遺族の範囲など、様々な条件があります。
遺族基礎年金の受給条件を理解し、適正に遺族基礎年金を受けましょう。
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